2011年10月21日金曜日

感染性ガンで絶滅の危機、タスマニアデビルを救えるか。

タスマニア島に生息するその名もタスマニアデビルは、現在感染性ガンが広まっていて、今のままだと25年以内に絶滅の可能性もあるようです。このガンの症状を、Devil Facial Tumour Disease (DFTD)といいます。
ガンは通常、自分の細胞が変異して自己の個体を死に至らしめたりはしますが、これが他の個体にまで感染してしまうというのは驚きです。
なぜこのような病気が広まってしまったかというと、タスマニアデビルは遺伝子の多様性が低く、互いに噛み合う習性があるので、噛み合ったときにガンが他の個体へ移ってしまうからです。

タスマニアデビル

そのため、現在タスマニアデビルの絶滅を防ごうという努力がなされています。
2004年から2010年まで、ガンに犯された個体を捕まえて隔離する方法がとられていました。
しかし、数学的なモデルで検証してみたところ、ガンの個体を96パーセント以上隔離しなければ感染の流行を抑えられないことが分かりました。
これは現実的には無理な数字のようです。しかもこれらの方法は1年に200,000ドル以上かかっているとのこと。

したがって代替案として、隔離だけでなく繁殖させるという方法がとられています。まだガンに犯されていない個体を隔離したり、ガン耐性個体の遺伝子やメカニズムを解明して、その知識を利用する、あるいは北西タスマニアにいるような遺伝的に少し異なる個体を持ってきて、それらを掛け合わせて繁殖させようというものです。
現在までに490以上の未感染のタスマニアデビルがブリーディングされているそうです。

しかし本当に感染性ガンでタスマニアデビルは絶滅することがあるのでしょうか。
ウイルスなどと同じように、あまり致死率が高いと感染先が徐々に少なくなってきて、毒性が弱まったり耐性個体が生き残ったりして事態は収束することになるように思えます。
また、遺伝的に似た個体が死んでいくということは、逆に言うと遺伝的に違う個体は生き残って数を増やすということです。これはボトルネック効果などで多様性が少なくなった集団が、遺伝的多様性のある集団になる過程のひとつなのかもしれません。
もちろんあまり個体が少なくなると環境の変動に弱くなるので、絶滅する可能性も高まる危険があることに変わりないでしょうが。

さらに、タスマニアデビルが互いに遺伝的に近くて細胞を個体から個体へ広げられるというのは、見方によっては良い作用に働くこともありうるかもしれないと思いました。感染性ガン細胞が変異して、集団にとって有利な細胞が広まるということはありうるのでしょうか。

参考ウェブサイト:Saving the Tasmanian devil: if not by selective culling, then how?(by Nick Beeton,Hamish McCallum) Cull 'cannot save' Tasmanian devil(BBC)

1 件のコメント:

  1. とても魅力的な記事でした!!
    また遊びに来ます!!
    ありがとうございます。

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